- 月 -

その日泊まった宿屋の部屋にもやっぱり四角い窓があって,
だからオレは 少しだけ,切ない気持ちになるのです。
何故なら窓の外にはきっと,大きな丸い月があるから。
かそけく さやかに 青白く,確かに輝く月があるから。

笑ってくれても構いません,月を見るたびオレはいつでも,
あのひとを思い出すのです。

見上げれば必ずそこにあるのに,なのに決して手の届かない,
遠く,青白い,月に似た,

あのひとを,思い出すのです――。
<終>

ファイブセンテンスカリスマ企画に踊ってみる その2。「窓」の「ある部屋」の「弟」バージョンに挑戦。
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